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ランダムは秩序を生まない 3

 

Q>うちの研究室に生物は偶然に発生したと信じる人がいます。

富井さんの文章をたまに読ませて感想を聞くのですが、今回の負のエントロピーについて以下のような説明をしていました。

 

「なんにもない環境ではそうかもしてないが、地球上には太陽光線というエネルギーが降り注いでいる。つまり、太陽という外力(もちろん、自然に偶然に働いている)が働いている環境では負のエントロピーは起こり得るのではないか」

 

この意見に対して、いかがな感想をお持ちでしょうか。

 

 

A>メールありがとうございます。

 

 そうですね。この点についても議論がありましたが、コンピュータのプログラマーが、画像に対してランダムなデータ操作を加えても、そこに有意な画像が生まれることはほぼ0だと言っておられました。

 

 太陽光線という外力があっても、それが進化にとって正に働くか負に働くかはランダムであり、仮に正に働くとしてもあくまでもその作用自体が「秩序形成への意思」を持つものでない以上、ランダムの域を脱することはできないのですから、それが秩序形成につながることは、ほぼ0であろうと思います。

 

 それは、サルをパソコンの前に座らせて、キーをたたかせて小説を書かせようとするのと同じです。単なるキーを物理的にたたくという無計画の外力だけではでたらめの入力結果しか得られません。

 

 外力+秩序への意思がなければ、負のエントロピーにはなりえず、とうてい秩序は生じないと思われます。

 

 いや、太陽光線だけではなく、他の要素も組合されればそういうこともあるかもしれない、という人がいるかもしれません。

 

 しかし、太陽光線にもろもろの要素を組み合わせても、組み合わせ自体がランダムになされるわけですから、もし秩序が生じたとしても、それは奇跡でしょう。

 

 いやいや、長い期間にわたればそういう偶然もあるだろう、というかもしれませんが、それは、地球の歴史を超えた期間が必要でしょう。サルがキーをたたいてシェークスピアの戯曲を完成させるよりもはるかに長い年月が必要でしょう。

 

 実験で原始地球に存在したであろうガスなどを組み合わせて簡単なアミノ酸を作ることができたとかありますが、やはり、あれは、人間が操作しているのであり、自然の状態において、ランダムに何か秩序や組織体ができることは奇跡を期待しない限り無理だと思います。

 

 それから、そもそも、エントロピーの法則の発見において、導入されたのは確率の概念であり、確率的にランダムでしかない境界条件しかなければ、秩序は放置すれば無秩序に向かうということだったのではないでしょうか。

 

 つまり、気体分子の運動の方向性が不定でランダムであるので、一列に並べられた気体分子を放置すると、拡散し、均質へと向かう、その逆はない。

 

 ランダムにランダムを無限に加えても、秩序は無秩序に向かっていき、その逆はないということだったのです。

 

 ですから、無秩序を秩序に向かわせるための負のエントロピーは、ランダムであってはならないということになります。

 

 このような意見なのですが、いかがでしょうか。