進化論とナチズム
進化論はそもそもヘーゲルの発展史観から生まれている。しかし、それがあまりにも思弁的だという理由で、何か実証的な思想が必要だという要請が当時(19世紀中頃)あった。世界が弁証法的に発展しているということを科学的に論証できるとされたものの一つが進化論だった。
ダーウィン主義はトマス・ハクスレーによって大衆化され、スペンサーによって倫理を含む全人生の問題に応用された。スペンサーの社会進化論は、ワルター・バジェットの集団進化論(「物理学と政治学:自然淘汰原理の応用と政治科学への遺産についての思想」(1872))へと発展し、進化論を土台にした社会集団の発展が説かれた。
バジェットの考えはさらにナチ党員ハインリヒ・ヒムラーの適者生存原理に基づく民族浄化説を生み出した。
ヒトラーは繰り返し、「キリスト教とその愛の考え方は、『強者の弱者に対する倫理』によって置き換えられるべきである。」と説いた。