こどものスケール:アルペジオを使って、チェルニー30番に誘導♪
こどものスケール:アルペジオ(音楽之友社)の使い方
楽譜の中には書ききれなかったことをご紹介します。
スケールやアルペジオは実は楽しく奥深いもの
子どもの能力、柔らかい脳は果てしない吸収力を持っています。
「指導者自身が過去に学んだ調号順に弾く」や、「こうであるべき」という考え以外にも様々なアプローチがあることをご紹介します。
子どもたちの潜在能力・才能をひき出し、無理なくチェルニー30番に繋いであげましょう
私は生徒をバスティン・メソード(全調メソード)で育てています。30年前バスティンメソードに出会って以来、その斬新な内容にカルチャーショックを受け、今もなおその魅力に取り憑かれています。
このメソードは幼少期(3~5歳)から全調を教えていくこと、リズムやハーモニーに独特の魅力があること、などから耳も感性も驚異的に伸ばすことが可能です。
バイエルやメトードローズを使って指導していた頃とは成長度合が比べ物になりません。
ピアノという楽器がどんどん改良され、驚くほどタッチや音色が進化しているのと同じように、現在、指導法も昔とは大違いに変化しています。
このメソードで育った子どもたちは、全24調を導入・初級の段階でクリアしてしまうので、未就学児や低学年から楽典に強くなり音感も育ちます。
でも全調メソードと聞くと、難しくて大変なことと思われるかもしれませんが、実は楽しくて簡単なことの積み重ねですから、誰でも受け入れることが出来ます。ただ、それを与える時期と、ご家庭で日々いかに継続させるかが一番難しく重要なことになってきます。
使い方その1
基本的な土壌作り(理論理解と耳作り)が出来ていること、そしてどのように種を蒔いていくか、ということになります。
そこで、使用する前に次のことがクリアしているか、確認しましょう。
①理論と耳の両方の角度から訓練
◎始める時期の理想的な例(おおよその目安)
・バスティン・メソードパーティーシリーズを終了。ベーシック・シリーズーレベル1終了。
・バーナム1巻終了
・みんなのオルガン・ピアノの本2巻終了
・5度圏理解(ぐるぐるまわる右回り、左回り調)→楽譜では9ページに観覧車の絵でご紹介
②基本的な手の形、指の関節、掌骨の状態が安定していること。
以上が整っていると、この楽譜に自然に入っていくことが出来ます。
スケールはまず楽譜の特徴であるリスグループ「ハ長調の指使いで弾ける10個の調」(短調も含む)を練習。
これら10個の調がつかえずに弾けたら、出てくる順番に難易度をあげて行きます。
耳が出来ていれば、先生の模倣をして、音を探りながら短調の音階を1オクターブで弾くことが可能です。
ハ長調と同じ指使いで弾けるので、子どもたちはイ短調、ホ短調、ニ短調、ト短調、ハ短調も、難なく弾くことが出来ます。
・開始音をかえる事で音色の違い、黒鍵を使う喜びを子どもたちは実感します。
・調号順に進めて行くと、早い段階で、ヘ長調、嬰ト短調、嬰ハ短調、嬰ヘ短調、を練習させる事になり、子どもにとってそれは大変な試練となってしまいます。
この10個の調(リス)が弾けるだけでも大喜びですから、意欲的な子どもは必ず、次に挑戦したい気持ちが湧いてきます。
指導者は確実に出来ていたら次の段階(うさぎ)へ導いてあげて下さい。
(ベーシックシリーズではレベル3で短音階を学びますが、今の日本の子どもたちはもっと早い段階でも短音階を理解出来ると思います。)
その2 分類
子どもたちに、ただスケールの課題を出しても、あまり練習してきません。(面白くない、覚えにくい、弾きにくいの理由から)
この楽譜では、スケールは子どもが大好きな動物で、アルペジオは果物で難易度順にグループ分けされているので、スケール「リス」とかアルペジオ「イチゴ」の様に次の課題を明確に出すことが出来ます。
その3 アルペジオ
アルペジオはスケールと平行して練習することも可能です。手の大きさ、能力に応じて先生やお母様の判断で始めて下さい。
その4 1オクターブスケールの扱いについて
黒鍵から開始するスケールは1オクターブと2オクターブ以上では 開始音、最高音域の指使いが異なるものがありますが、この楽譜では
将来4オクターブを弾くことを前提にそれを記載しています。
チェルニー30番ではスケール、アルペジオが沢山出てきます。
1オクターブでもよいので、全調スケールとアルペジオが出来ていれば、スムーズに生徒をチェルニー30番に誘導させることが出来ます。
1オクターブ弾けた子どもたちは、必ず2オクターブに挑戦したくて「うずうず」します。大人からの強制ではなく、自発性を促すことに大きな意味があります。
スケールもアルペジオも、入り口で興味を持たせる事に成功出来れば、全調、4オクターブに誘導出来るますから、この事は生徒の成長もさる事ながら、指導者にとっても、大きな楽しみとなるでしょう。
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